実務解説 (転載禁止)

裁判官への対応

1 まとめ

既に述べてきた内容はまとめると以下のとおりです。


  1. 症状(後遺障害)の有無や程度を判断するために診断の適否を検討する必要はありません。事実に対する評価に事実を変更する力はありません。

  2. 「CRPSを発症した。よって、CRPSによる症状が生じた。」との関係はありません。症状をもとに診断を下すのであり、診断をもとに症状が裏付けられることはありません。

  3. CRPSには必須の症状は1つもありません。これは国際疼痛学会の判定指標や日本の判定指標から即座に導かれます。臨床の大規模調査でも全てのCRPS患者に出現した症状はありませんでした。

  4. CRPSの診断に骨萎縮は必須ではありません。有名な大規模調査によればCRPS患者のうち骨萎縮が出現するのは36%です。その大半は軽度ないし軽微な骨萎縮であると推定され明らかな骨萎縮ともなればその数は大幅に減少すると考えられます。

  5. 労災・自賠責のRSDの3要件は診断基準ではありません。カウザルギーと同様に扱うための基準であると後遺障害認定基準自体が明記しています。

  6. 労災・自賠責のRSDの3要件は多くの条件を設定しているため、現実のCRPS患者であってもこの3要件を満たす者はほぼ皆無であると予想できます。

  7. 労災・自賠責の後遺障害認定手続で医師の診断の適否を検討することはありません。非医師が業務として日常的に医師の下した診断の適否を検討し判断することは医師法違反の疑いが極めて強いものとなります。

  8. 重度のCRPSないし終末期のCRPSには必須の症状が多数あるとの事実を確認した臨床調査等は行われていません。CRPSに必須の症状が1つもないのに重度ないし終末期において急に多数の症状が必須となるとすることは不合理かつ不自然です

  9. 上記に反する主張が医学雑誌等に掲載されていても信用してはいけません。それらの論文は査読を受けて学会の承認を得たものではありません。医学雑誌には極端な異端説もしばしば掲載されています。

  10. 被害者は①後遺症の残存と②後遺症と事故との因果関係を主張しており、裁判官はこの2点を判断する必要があります。加害者側は上記①の検討をしないように様々な方法で誘導し、上記②の検討で代替原因(他原因考慮)を検討しないよう誘導します。

2 主張それ自体を無視する判決の存在

これから記載する部分は書くかどうか迷った内容が含まれています。それは裁判官への批判と受け取られるおそれのある部分があるからです。即ち、私が訴訟で上記の内容を主張したことに対して、判決のなかにはその主張や証拠それ自体を完全に無視したものも数件ありました。上記の各主張は被害者側の主張の中核を形成するものですが、被害者がその主張をしていること自体に一切言及しない判決を下す裁判官が少なくないというのが現実です。  例えば、上記ウのCRPSには必須の症状が1つたりとも存在しないことはCRPS患者を対象とした大規模調査の結果や国際疼痛学会や日本の判定指標から明白です。ごく基礎的・初歩的な医学的常識です。この事実はこの訴訟で最大の焦点となる論点に関わるものなので私は全ての訴訟でくど過ぎるほどしつこく何回も主張し、証拠(各症状の頻度を記載した医学論文)を提出します。さらに太字で強調して「絶対に判決で引用し、検討すべき主張である」と書いたりもします。しかし、被害者側がその主張をしていること自体を引用しない判決を受けたことが何回かあります。  同様に上記アないしコの主張についてもしつこく何回も主張したにも関わらず、被害者側がその主張をしていることが判決に一切引用されなかったことが何回かありました。結局被害者側の主張が症状経過以外何も記載されていない判決となったこともあります。訴訟を起こした原告がほとんど何の主張もしていない体裁の異常な判決でした。その結果、主治医が認めた重い後遺症を理由に数千万円から1億円超の損害を主張している被害者に対する賠償額が、判決では後遺症自体を否定されて100万円から400万円ほどに大幅減額されることとなりました。  当事者の中核的主張やその主張を支える証拠の存在それ自体を無視した裁判はおおよそ法治国家の行うべき裁判とは言えません。当事者が決定的な証拠を出し、決定的な主張を行ったとしても、裁判官がそれを無視したのでは公正な裁判は根底から成り立たなくなります。裁判官がそれをやってしまっては法治国家の中で裁判を受ける意味が根底から否定されてしまいます。  このような対応を受けた当事者本人やその親族や関係者は「あの裁判官は絶対おかしい。偏っている。」と受け止めて裁判官の中立性や公平性に多大な疑念を抱くこととなります。関係者の中には被害者を診察した医師や被害者を介護しているヘルパーもいます。被害者の現状を知るほぼ全ての人は、被害者の主張それ自体を無視した裁判に多大な疑問を持つことになります。それは司法の信頼を根底から揺るがす事態とも言えます。  この点について私は「ウソ医学とウソ理屈」の項目では加害者側の騙しの理屈に洗脳に近いレベルで完落ち状態となった裁判官が、その洗脳を維持しようとして脱洗脳を促す被害者側の主張に対して強い拒絶反応を起こしているとの趣旨を述べました。即ち、裁判官が当事者の一方から経済的な調略を受けているわけではなく、強度の精神的な調略(洗脳)を受け、そのために原告側の主張を強く拒絶して無視したとするのが私の理解です。  しかし、そのような私の説明は依頼者や関係者たちには不可思議に見えるようでした。「被害者側の主張を引用すらしないのは裁判官個人の経済的な事情が判決の背後にあるからではないか。」との疑念を非常に強く持っているようでした。確かに「優秀な頭脳と強固な意志を持つはずの裁判官が強い洗脳を受けるとか、その結果司法の一員としては絶対にやってはいけない行動(主張・証拠の無視・隠蔽)を行ったとの説明には説得力がない。」、「重い後遺障害に対する高額の賠償金が問題となっている事案は何らかの力が作用しやすい事件である。」というのも相応の根拠があります。「そもそも洗脳を受けていたのであれば被害者の主張を引用したうえでその洗脳に従った反論をするはずである。」との理屈の方が自然とも言えそうです。加えて地裁交通部の裁判官は同種事件を非常に多く扱うため、その一方当事者からの経済的調略の対象となりやすい立場にあり、経済的調略に応じれば莫大な利益を受け取ることもできるとの想像も成り立ちます。  そのような考えの人からは私の考えは、あたかも「あれは確かに孫じゃった。」と言い張って騙されたことを頑として認めない振り込め詐欺の被害者のように見えたのかもしれません。それが普通の一般人の見方なのかもしれません。しかし、訴訟でのCRPS事案の内容は私が40件を超える裁判例の解説で述べてきたとおりであり、私はそれ以外の約100件の裁判例も読み込んでいます。加害者側からの騙しの理屈は巧妙でそれが多重的・多層的に提出され、医学意見書や鑑定書、さらには医学論文がそれを補強し、その結果大多数の裁判官が騙されたことや、それらの裁判例の積み重ねそれ自体も裁判官を騙す根拠となっているとの構造があります。さらにRSDの3要件という公益性の高い公的基準を用いた騙しの理屈もあり、むしろ大多数の裁判官が入れ食い状態で騙されてきたのが当然とも言えます。  加害者側の理屈の中心は「ないものねだり」です、被害者が主張するのは現実に存在する事実であるのに対して、加害者側は存在する事実の検討ではなく、存在しない事実の「ないものねだり」を主張し、それがなければ現実に存在する事実に対する実質的心証が形成されない状態で判断が下されます。即ち、「裁判官の心証をスカスカにして結論だけ決めさせる」という加害者側の方針はそれに騙された裁判官を洗脳に近い状況(操りやすい虚無の精神状況)にするという特徴もあります。そのようなことから私は裁判官が洗脳に近い騙され方をした結果として当方の中核となる主張が完全に無視されて引用すらされなかったと考えています。もちろんそれに対する上記の疑問があることは承知しておりますが。  では、被害者側の主張している内容を判決に引用させるためにはどうしたら良いのでしょうか。今のところ私には決定的な方法はありません。以下ではその方法として考えられるものを述べていきます。


3 犯罪であることを繰り返し述べる

 他の項目でも述べてきましたが加害者が損害賠償金の全部ないし一部の支払いを免れるため、ことさらに虚偽の事実(医学的知見等)や騙すための理屈を裁判所に主張してそれにより裁判官を錯誤に陥らせ判決を損害賠償金の減免を内容とする判決を取得することは、訴訟制度を利用した詐欺を構成します。  CRPSの事案は被害者が主張している後遺症の程度が重いことが多く、その損害賠償金の額も高額となることが多いことから、加害者側が詐術を用いてその支払いを免れようとすることは言語道断の極めて悪質な犯罪行為であると断言できます。  このような加害者側の騙しの主張とは異なる主張を全ての準備書面で繰り返し述べることにより、裁判官の脱洗脳を進めるという方法が考えられます。なお、この主張はあくまでも一般論として行う必要があり、その事件のこととして主張すると問題が生じる可能性があります。


4 犯罪の隠蔽はそれ自体が犯罪となる可能性がある

 仮に加害者側の主張が虚偽であった場合には、虚偽事実や騙しの理屈を主張して損害賠償金の支払いを免れようとする加害者側の主張に対して、被害者側は正しい事実や正しい理屈で対抗しようとします。しかし、裁判官が被害者側の主張や証拠を判決で引用せずに隠蔽することは、犯罪の隠蔽にほかならず詐欺行為への共犯の成立可能性があるほか、証拠隠滅罪や犯人隠避罪を構成する可能性もあります。そのことを準備書面等で繰り返し述べるという手もあります。  この主張は加害者側の騙しの主張とは異なる主張であり、この主張を繰り返すことにより裁判官の脱洗脳を進めるという方法が考えられます。なお、この主張も一般論であることを強調して行う必要があります。


5 弁論準備手続で裁判官に圧力をかける

 このほかにも弁論準備手続で裁判官に「当方の主張は判決で引用されるのでしょうね。」と期日ごとに繰り返し問い質して裁判官に圧力をかける方法が考えられます。しかし、私はこの方法は避けた方が良いように思います。書面に記載して提出する上記の方法と比べると品位が欠けるように思うからです。圧力をかけるために被害者側の代理人の数を増やすのも効果はなさそうです。最近は弁論準備手続はウェブ会議方式になったので何の圧力にもなりません。但し、被害者側代理人の数を増やすのは効果的かもしれません。  上記のとおり私はしつこく主張したにもかかわらず「CRPSには必須の症状は1つもない」との主張やその証拠を完全に無視されたことが数回あります。被害者側としてやれることは全てやりきらないと、その主張や証拠を完全に無視した判決が出た時に悔いが残ることとなります。裁判官が当方の主張を認めない和解案を出したときに、「当方の主張(CRPSには必須の症状が1つもないこと等の具体例をあげる)は判決で引用されるのでしょうか。それに対してどのような反論があるのでしょうか。」と聞くことは問題ないと思います。それに類する発言であれば裁判手続の中で述べても問題ないと思います。


6 弁護団を結成する

 被害者側の決定的な主張や証拠を無視する裁判官の行動は司法制度の根幹を揺るがすものであり、それに対抗するためには被害者側も弁護団を結成して戦う必要性が高いとも言えます。但し、弁護団を結成するのであればRSDの3要件の制定という厚生労働省の失策が招いた大問題であることを前面に出すべきでしょう。その名目で弁護団を結成してマスコミ等にも連絡し世の中に周知してもらうことにより、裁判官が主張それ自体を無視するという行動に出ることを抑制する効果も期待できます。  CRPS患者を狙い撃ちにしたRSDの3要件はその制定から20年を超えるもいまだに是正されることがなく新たな被害者を生み出し続けています。その間の被害者数は数千人を優に超えると予想でき、これは厚生労働省が関与した事件としては薬剤エイズ事件を大幅に上回る規模の事件であり、歴史に残る重大な事件であると言えます。そのカラクリは「RSD(CRPS)には必須の症状が1つもない」との医学的常識を無視することを中核としています。然るに「CRPSには必須の症状が存在しない」との主張を被害者側が訴訟で行っても、多くの裁判官がその主張の存在自体を無視する行動に出ています。その原因の1つはRSDの3要件はRSDに必須の症状が3つも存在することを前提としている点にあることは明らかです。  以上の名目で弁護団を立ちあげることにより、被害者側の主張の存在を裁判官に認めさせることが考えられます。そもそも被害者側がここまでしないと一部の裁判官が被害者側の主張や証拠を断固として無視する恐れがあることは非常に異常なことであると思います。


7 司法行政権の行使を求める

 判決が出て主張の引用がなされなかった場合には、地裁長官や高裁長官に対して「当事者の決定的主張それ自体を無視して隠ぺいする裁判官がいます。その行為が犯罪に該当する可能性があります。何らかの背景事情が存在する可能性もあります。そのため調査を求めます。」として司法行政権(裁判所法20条、同29条)の行使を求めるという方法もあります。この方法は裁判官の懲戒(裁判所法49条)に該当する可能性のある行為について調査することは司法行政権の中に含まれるとの解釈が前提となります。  さらに訴訟の準備書面に上記の内容を繰り返し記載することで裁判官が当方の主張を無視しないように圧力を掛けるという手も考えられます。そうまでしないと決定的主張や証拠の無視・隠蔽が行われる恐れがあるというのも悲しい現実ですね。  私はこれらの方法をやるつもりは全くないのですが理論的にはこのような方法も考えられます。この方法を書いたのは主張の存在自体を完全に無視した判決が許せないからと言って裁判官に対して暴言を吐くなどの度を越した行動を決して行ってはならず、このような法的な対処方法もあることを示すためです。


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